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東京の夜の道。車通りの少ない女性で酔っ払った女性が手を挙げている。キキーッとブレーキ音が聞こえて女性が顔を上げると、ママチャリに乗った男性が目の前に止まっている。男性はまっすぐ前を見ている。 女性 「・・・。」 運転手 「・・・乗んないの?」 女性、酔っ払っているのでママチャリの荷台に乗る。 運転手、自転車を漕ぎ始める。 運転手 「どちらまで。」 女性 「高田馬場。」 運転手、無の顔で自転車を漕ぐ。 女性 「タバコ、良いですか?」 運転手、携帯灰皿をポケットから出して渡す。女性、電子タバコをつける。 女性 「・・・。」 運転手 「・・・。」 女性 「・・・男って馬鹿ですよね。」 運転手 「・・・。」 女性 「いつまでもこっちが自分のこと好きとか思ってんだから。」 運転手 「・・・。」 女性 「何も言わないで・・・。ほんと、馬鹿・・・。」 女性、泣き出す。 運転手、ティッシュを差し出す。 運転手 「・・・。」 女性、ティッシュを受け取って鼻をかむ。 女性 「・・・馬鹿。ばかばか。馬鹿・・・。」 女性、鼻をかむ。 運転手 「・・・花粉が、すごいですね。」 女性 「・・・。花粉症ですか?」 運転手 「・・・。」 女性 「花粉症ですか?」 運転手 「・・・いいえ。」 女性、爆笑。 女性 「何それ。ウケる。」 運転手、ブレーキを踏む。 運転手 「着きました。」 女性 「いくらですか?」 運転手 「・・・600円くらいで。」 女性 「お釣りありますか?」 運転手 「ありません。」 女性 「じゃあ500円で。」 運転手 「はい。ありがとうございました。」 女性 「ありがとうございました。」 運転手 「足元、お気をつけください。」 女性、歩いて去っていく。 運転手、少し見送ってから、自転車を漕ぎ去る。
終
タクシーにまつわるエピソードっぽいやつを自転車でやりたいだけ。基本的に。 この脚本書いてて、客の役がイメージ的にどうしても女性になってしまうなと思い、自分の中のジェンダー観に少しむかついたので、男女逆バージョンも撮りたいと思う。別キャストで。男性が客。女性が運転手。 お客さん役は、数年間付き合ってた人が居て、恋人はフリーター。自分は会社員。その恋人はうだつが上がらなくてここ数年ずっとダラダラしてて、以前は目をキラキラさせて夢を語っていたが、最近はすっかりだらけきって、自分はダメだみたいなモードに入っているが、今更まともな社会人にもなれないとか、なんかグダグダしてる。その恋人をダメにしてるのは自分かもしれないと思って、別れを切り出した。けど、あんまり真剣に話を聞いてくれなかったので、家を空けてる時に引越しをして半ば強引に別れたばかり。で、新しい街での生活を始めたところ。やったことないけど、一人で飲み歩きとかしてみようとか思って、街で呑んでみたけど、人が良いので他人の話を聞いてばかりで、ただひたすらにお酒を飲む。ホントは自分の最近の身の上話を誰かに聞いて欲しかった。けど、それは叶わずただただ酔っ払ってベロベロになっていたところ、がシーン冒頭。別れた恋人のことが本当は好き、好きっていうか、もう数年同棲してたから情とかもあるし、別れはそれなりに辛い。その気持ちをどこかに吐き出したくて。自転車の後ろに乗ってタバコを吸ってたら、なんか色々思い出してきて、溢れそうだからなんか話そうとしたら結局、そのことしか出てこなくて、溢れてしまう。運転手が沈黙なのも、他人の話ばっかり聞いた後だからその沈黙が心地よくて吐き出しちゃう。自転車に乗るのも、お金を500円しか払わないのも酔っ払ってるから。半分夢心地。 運転手は、バイト帰り。めちゃくちゃ関係ないけど、客の恋人と同じ夢を見てフリーターやってる身分。いつもの道を帰ってたらフラフラしてタクシーを待ってるらしき人を見かけたけど、その道はタクシーが来ないことを知ってて、面白そうだし、少し心配だし、止まってみた。下心みたいに思われるのも嫌だし、少し無愛想になっちゃった。余計なお世話かもしれないから、乗らないの?って。こっちは全然、乗ってもらっても良いけど、乗んないの?って。そしたら乗ってきたし、なんか、傷心真っ只中だから、何を言ったらいいかわかんねー。女性の涙とかにも慣れてないから、なんか泣いてるの気付いてませんよってアピールするために花粉すごいですね。って言ったら外したけど、なんかウケてる!っていう、そして駅に着いたらタクシーだと思われてたから、最後ちょっとタクシー運転手っぽいこと言う。みたいな。感じ。